糖尿病を見逃していませんか?
相談
Aさん 36才
男性 会社員 身長167cm 体重73kg(BMI26.2)
「両親が糖尿病で治療中なので、私も糖尿病が一番心配です。
最近太りすぎのため、健康診断前の3ヶ月、食事に気をつけ、水泳と1日1万歩は歩いて体重も3kg減量しました。
今回、会社の健診では尿糖(-)・空腹時の血糖値が108mg/dl・HbA1c5.8%でした。その結果[糖尿病:問題なし]の判定でした」
「本当に私、糖尿病は大丈夫なのでしょうか?」
回答例
- 糖尿病ではありません
「尿糖・空腹時の血糖値・HbA1cとも正常値ですから、現在糖尿病の心配はありません」 - 将来は糖尿病の可能性があります
「現在尿糖・空腹時の血糖値・HbA1cとも正常値ですが、遺伝的素因・肥満傾向があり将来糖尿病になるかもしれません。食事・運動に気をつけて定期的に健康診断を受診して、異常値が見つかった時点で、再度受診して下さい」 - 現在すでに糖尿病の可能性もあります
「尿糖・空腹時血糖値・HbA1cは正常値ですが、食後血糖値が既に上昇している可能性があり、精密検査の結果により、現在の食事・運動療法に併用して内服薬による治療が必要な場合もあります」「一度、ブドウ糖負荷試験をうけるようお勧めします」
「さて、Aさんは糖尿病なのでしょうか?」
Aさんの75gブドウ糖負荷試験結果
「Aさんはすでに糖尿病です」
「健康診断では尿糖・空腹時の血糖値・HbA1cは正常値でしたが、75gブドウ糖負荷試験による負荷後血糖値が高値を示しており、Aさんは現在既に糖尿病です。現時点で食事・運動療法は熱心にされているようですので、これに加えて内服薬の併用による治療をお勧めします」
その理由は
空腹時血糖値が正常型でも、食後血糖(糖負荷試験2時間値)が糖尿病型であれば死亡する確率が2倍となるという報告があります
(DECODE研究)
治療法
各々の病態にあったお薬があります
- 食後の血糖値の急上昇を抑えるお薬があります
- 食後のみインスリン分泌を増やすお薬があります
- インスリンの効き目を高めるお薬があります
ご存知ですか?
空腹時血糖値が糖尿病型ではなく、食後血糖(糖負荷試験2時間値)のみで糖尿病と診断される人が45%もいます
(DECODA研究)
「糖尿病早期発見のためにブドウ糖負荷試験を受けましょう」
あなたの糖尿病にあった薬を飲んでいますか?
糖尿病の原因には
「インスリンの出が悪くなる場合(インスリン分泌不全)」
「インスリンの効き目が悪くなる場合(インスリン抵抗性)」
があります。よって個々の病態によって使用する薬剤が異なります。
効果 | インスリンを出す作用あり | インスリンを出す作用なし |
---|---|---|
食後血糖を下げる | シュアポスト
ファスティック スターシス グルファスト |
セイブル
ベイスン グルコバイ |
ネシーナ
ジャヌビア グラクティブ エクア |
アクトス | |
空腹時血糖も下げる | グリミクロン
オイグルコン ダオニール アマリール |
メトグルコ
メデット ジベトスB |
自分の飲んでいる薬のタイプを知っておきましょう
- グルファスト
- ネシーナ
- ジャヌビア
- グラクティブ
- エクア
- グリミクロン
- アマリール
- ベイスン
- グルコバイ
- セイブル
- アクトス
- メデット
- ジベトスB
- メトグルコ
「過去のデータ・健康診断の結果をご持参の上、お気軽にご相談下さい」
病態にあわせた経口血糖降下薬の選択
「インスリン注射は外来で開始できます」
インスリン注射を一度はじめると一生続けなければいけませんか?
早期にインスリン注射をはじめた場合、ご自身のすい臓からインスリン分泌能が改善し、短期間で内服薬へ戻すことも可能です。
糖尿病の病態は個々で異なりますので、担当医にご相談ください。
注射器の針を刺すのは「怖いし、痛いのでは」と心配です。
現在のインスリン注射の主流は、ペン型注射器です。
使用する針はとても細い針(34G4mm(外形0.18mm、長さ4mm) )が開発されており、注射をする場所も主に腹部のため、痛点に当たらなければ痛みはほとんどありません。
大きさも万年筆とほぼ同じですので、どこにでも持ち歩けます。
常温保存も可能なため上着の内ポケットに入れておくことも可能です。
以前に比べインスリン療法は格段に進歩しており、安全かつ簡単に注射する事ができます。
一度説明を聞いてみて下さい。
血糖コントロール不良で「インスリン注射が必要のため入院して下さい」といわれましたが、仕事が多忙のため入院できません。
インスリン注射は外来にて導入できます。
当院ではまず、血糖自己測定(SMBG:self-monitoring of blood glucose)を覚えていただき、その結果に基づいて使用する「インスリンの種類」「インスリンの量」「インスリンの使用回数」を決定いたします。
インスリン量は少量より開始いたしますので外来でお仕事の制限をすることなく開始することも可能です。
血糖自己測定を導入するため、トラブル時にもご自身で血糖の確認が可能です。
しかしながら、糖尿病性ケトアシドーシス、重症感染症等入院が必要なケースもありますので、担当医にご相談ください。
インスリンは一日何回も打たないといけませんか?
中間型や持続型インスリンの就寝前1回注射・混合型や中間型インスリンの朝1日1回注射によるインスリン注射も可能です。
この場合、インスリン注射器を持ち歩く必要がありません。
その他、混合型や中間型インスリンの朝夕1日2回注射、速効型インスリンの毎食前3回注射、速効型インスリンの毎食前と就寝前に中間型インスリン注射の4回注射等の注射方法があります。
当院では外来でのインスリン注射開始の場合、超速効型インスリンの毎食前3回注射での導入をお奨めしております。
その理由としてこの方法が「生理的インスリン分泌動態に近いこと」、「低血糖症状を起こしづらいこと」等によります。
患者さんの病状・ご希望に応じて注射回数やインスリンの種類を決定いたしますので、詳しくは担当医へご相談ください。
血糖コントロールの指標と評価
治療目標は年齢、罹病期間、臓器障害、低血糖の危険性、サポート体制などを考慮して個別に設定する。
- 適切な食事療法や運動療法だけで達成可能な場合、または薬物療法中でも低血糖などの副作用なく達成可能な場合の目標とする。
- 合併症予防の観点からHbA1cの目標値を7%未満とする。対応する血糖値としては、空腹時血糖値130mg/dL未満、食後2時間血糖値180m/dL未満をおおよその目安とする。
- 血糖値などの副作用、その他の理由で治療の強化が難しい場合の目標とする。
- いずれも成人に対しての目標値であり、また妊娠例は除くものとする。
日本糖尿病学会編:糖尿病治療ガイド2014-2015(文光堂2014年)より引用
血圧 | 130/80mmHg未満 |
---|---|
LDLコレステロール | 120mg/dl未満 |
中性脂肪 | 150mg/dl未満 |
HDLコレステロール | 40mg/dl以上 |
「過去のデータ・健康診断の結果をご持参の上、お気軽にご相談ください」