全速力で100m走ったとしたら、誰でも息が切れます。でも、ちょっと走っただけとか、駅の階段を昇っただけでも息が切れるとしたら、それは何かの病気が潜んでいると考える必要があります。
人は、呼吸によって空気中の酸素を肺の中にとり入れ、その酸素を血液の中へとり込んで、それを心臓の力によって身体のすみずみまで送り、その酸素の力で全身の臓器を動かしています。「息が切れる」というのは、一言で言えば「酸素不足の状態」ということです。
したがって、酸素不足の状態を起こす病気として一番先に考えられるのは、「呼吸に関連する病気」と「心臓・循環器に関する病気」です。前者には、肺気腫、気管支炎、気管支喘息、肺結核などがあり、後者には、心不全、心臓弁膜症、狭心症、心筋梗塞などがあります。
呼吸器や心臓・循環器に病気がなくても「息が切れる」病気の一つに、貧血症があります。
貧血になると酸素が不足する
最初のところで、「呼吸によって空気中の酸素を肺の中にとり入れ、その酸素を血液の中へとり込んで・・・・・・」と説明しました。それをもう少し詳しく言いますと、「酸素を血液の中へとり込み、血液中の赤血球に含まれる血色素という色素と結合させて・・・・・・」ということになります。つまり、酸素を全身へ送るのには、赤血球と血色素の存在が必要なのです。
貧血症というのは、血液中の赤血球の数が減っているか、または血色素の量が減ってしまった状態をいいます。つまり、貧血症では他に異常がなくても、全身に送られる酸素が不足することになります。
下記の表で貧血症のときに見られる症状について、チェックしてみてください。
「Yes」が多いほど貧血症度が高くなります。
貧血症度チェック
- 疲れやすく、だるい
- すぐ息切れがする
- 顔が青白い
- 爪の色が赤みを帯びていない
- 爪が薄くて、平らだ
- まぶたの裏が白い
- すぐ居眠りをする
- 頭痛、頭重がある
- 脳貧血を起こしやすい
- すぐに動悸がする
貧血症の症状
貧血症があると、全身に送られる酸素が不足の状態になると言いましたが、そのことは、別の見方をすれば、酸素のうすい空気の中で生活しているのと同じ状態といえます。その結果、息切れ、動悸、脳貧血、頭痛、頭重などの症状がでます。
また、酸素不足のために、居眠りが出やすくなることもあります。同じ理屈で、貧血症があると、疲れやすい、だるいなどの症状も出てきます。
貧血症は、血液中の赤血球の数、血色素の量が減った状態ですので、皮膚の赤みが減って、顔が青白くなり、爪の色の赤みも減ります。とくにまぶたをひっくり返してみると、まぶたの裏の赤みが減って白くなっているのが貧血症の典型的所見です。
また、爪が薄くて、平らになり、普通とは逆にそってしまうことがあり、スプーン形の爪と呼んでいます。
貧血症の種類
貧血症の種類を原因別に分類すると、
- 赤血球の製造場所である骨髄に原因のある貧血、代表的なものとしては「再生不良性貧血」「骨髄異形成症候群」
- 材料である鉄分の不足が原因となる「鉄欠乏性貧血」
- 赤血球の寿命が短くなる「溶血性貧血」
の3種類になります。
頻度として一番多いのは、「鉄欠乏性貧血」です。とくに若い女性に、かなりの高い頻度で見られる病気です。
貧血症は徐々に進行している場合は自覚症状があまりないことや、自覚症状があってもその原因が貧血症であることに気がつかないことが多く、治療をせずに放置されているケースがかなりあります。定期健康診断などで貧血症を指摘されたときは、必ず医師に相談してください。
また、少しでも疑わしい症状があったら、血液を調べて、貧血の有無を確認してください。
最後に貧血症の原因として、子宮筋腫や大腸がんなどの重大な病気が陰に隠れていることがあることを付け加えておきます。