疲れ・だるさの種類
「疲れ・だるさ」が慢性的に続く病気に「慢性疲労症候群」があります。職場における「慢性疲労」(産業疲労)についての調査によると「疲労」は、身体機能と精神機能の低下がミックスされたもので、その症状は次のように3つのグループに分けることができます。
- 眠気とだるさ(頭が重い、全身がだるい、あくびが出るなど)
- 注意・集中力の低下(考えがまとまらない、イライラする、物事に熱心になれないなど)
- 局在した身体の違和感(頭が痛い、肩がこる、まぶたや筋肉がぴくぴくするなど)
慢性疲労症候群は治療法も確立していない
文字どおり慢性的に疲労が続く病気です。診断基準の基本は、腎臓病、肝臓病、貧血症などの「疲れ・だるさ」の原因となるような病気がないのに「疲労」が6か月以上続くことです。
慢性疲労症候群と診断される「疲労」の程度は、表1のチェックで、段階3以上のもので、日常生活が損なわれるような激しい「疲労」です。慢性疲労症候群の症状については、身体的なものと、精神的なものに分けて、表2と表3でチェックしてみてください。
「Yes」が多いほど慢性疲労症候群度が高くなります。
表1.疲労の段階度チェック
- 倦怠感がなく、平常の日常生活ができ、制限を受けることなく行動できる
- 通常の社会生活ができ、労働も可能であるが、疲労
- 通常の社会生活、労働も可能だが、全身倦怠感のため、しばしば休息が必要である
- 全身倦怠感のため、月に数日は社会生活や労働ができず、自宅にて休息が必要である
- 全身倦怠感のため、週に数日は社会生活や労働ができず、自宅にて休息が必要である
- 通常の社会生活や労働は困難である。軽作業は可能であるが、週のうち数日は自宅にて休息が必要である
- 調子の良い日には軽作業は可能であるが、週のうち50%以上は自宅にて休息している
- 身の回りのことはでき、介助も不要であるが、通常の社会生活や軽作業は不可能である
- 身の回りのある程度のことはできるが、しばしば介助が必要で、日中の50%以上は就床している
- 身の回りのこともできず、常に介助が必要で、終日就床を必要としている
表2.慢性疲労症候群度チェック
(身体的な疲労)
- 疲れ、だるさが持続する
- 微熱(37~38度)がある
- 喉の痛みがある
- 移動性の関節痛がある
- 筋肉の痛み、不快感がある
- 筋力の低下がある
- リンパ節が腫れている
- 頭痛、頭重がある
- 一晩寝ても疲れがとれない
- 軽い仕事でも疲れる
表3.慢性疲労症候群度チェック
(精神的な疲労)
- 思考力の低下がある
- 眠れない
- 憂うつである
- 体調に不安がある
- 働く意欲がない
- 健忘症がある
- まぶしくて目がくらむ
- ポーッとすることがある
- 集中力が低下している
- 朝起きられずに寝過ごしてしまう
古くからこのような状態があることは知られていましたが、慢性疲労症候群という名前で広く知られるようになったのは、アメリカの疾病管理センターが、1988年にこの病気の診断基準を発表してからです。病気の本態、原因などについては、いまだに不明の点が少なくないのですが、ウイルス感染、免疫の異常、内分泌(ホルモン)代謝の異常、精神科的疾患など、多くの因子が関与していると考えられます。
命に別条はないのですが、治療法も確立しておらず、激しい「疲労」のために社会生活や仕事が十分にできず、またこの病気に対する一般の人の理解も得られないことが多いために、著しい生活の質の低下を招くことが問題となっています。チェックの症状に思い当たる人は、かかりつけ医に相談してください。