「のぼせる」病気
「のぼせる」という言葉を国語辞典で引くと、「逆上せる」と漢字が当てられています。普通、血液は上から下、つまり頭から足の方へ流れるのに、逆に下から上に流れる、つまり「頭へ血が上る」ように感じることを「のぼせる」というのだと思います。
実際には、人の身体の中で、血液は心臓から全身に送られるわけで、当然頭へも血液が流れるようになっています。むしろ頭へ血液が行かなくなったら大変です。ですから「のぼせる」という症状の本態は、血液の流れの異常ではなくて、そのように感じる状態ということになります。仕事のストレスが重なったり、長湯をしすぎたり、暑い場所にいたときなどに「のぼせる」ということがありますが、これは「生理的のぼせ」です。
多血症は、文字どおり血が濃すぎるために「のぼせ」症状が出ます。
高血圧症の人のなかに「のぼせ」の症状を訴える人がいます。血圧が高いことは「のぼせ」と直接的な関係はないと思われますが、血圧が急激に高くなったときに「のぼせ」を感じる可能性はあります。
甲状腺機能亢進症のときにも、「のぼせ」の症状を認めることがあります。自律神経失調症と称される状態(病気)のときに、「のぼせ」の症状が出るようです。
更年期障害は男性にもある
「のぼせる」病気の代表に「更年期障害」があります。下記の表で更年期症状をチェックしてみてください。
「Yes」が多いほど更年期障害度が高くなります。
更年期障害度チェック
- 顔や上半身がほてる
- 無気力で、疲れやすい
- 汗をかきやすい
- 夜なかなか寝つかれない
- 夜眠っても、目を覚ましやすい
- 興奮しやすく、イライラすることが多い
- いつも不安感がある
- ささいなことが気になる
- くよくよして、憂うつなことが多い
- 目が疲れる
- 物忘れが多い
- めまいがする
- 胸がドキドキする
- 胸がしめつけられる
- 頭痛、頭重がよくある
- 肩や首がこる
- 背中や腰が痛む
- 手足の関節が痛む
- 手足が冷える
- 手足(指)がしびれる
- 最近、音に敏感になった
この表は、日本産科婦人科学会生殖・内分泌委員会が2001年に発表した「日本人女性の更年期症状評価表」です。
更年期とは、医学的に言うと、女性のライフサイクルのなかで生殖器から生殖不能期への移行期のことで、通常は閉経をはさんだ前後5年程度、すなわち45~55歳くらい、幅広く考えるときは、65歳までの年代を言います。
更年期には、さまざまな症状(愁訴)が見られますが、その訴えが強いときに「更年期障害」と呼びます。
更年期症状は大きく2つに分けることができます。
第1は、血管運動神経症状が中心の身体症状で、「のぼせ」「ほてり」「発汗」「腰や手足が冷える」などです。
第2は、「憂うつ」「不眠」「不安」「イライラする」などの精神神経症状です。
更年期と言われることは、女性にとっていやなムードを持っているようです。しかし、更年期を、女性が完熟する時期と考えましょう。そうすれば、更年期障害も案外気にならなくなります。完熟する時期を楽しく思うのも、心細く感じるのも、心の構え方次第なのです。
最近、女性と同じように、男性にも「男性更年期障害」があるのではないかという意見があります。ただ、女性の更年期は女性ホルモンの急激な低下(閉経)という限定された時期として定義されますが、男性の場合、加齢による男性ホルモンの低下は緩慢に起きるうえに、個人差がきわめて大きいのが特徴です。
したがって、中高年の男性が訴えるさまざまな症状(愁訴)をすべて男性更年期障害と呼んでいいかどうか論議の分かれるところで、男性更年期障害というのは今のところ正式な病名とは言えません。
いわゆる「男性更年期障害」の症状として、女性の更年期障害の症状にプラスして、「性欲の減退」「朝の勃起の減少」「尿が近い」「残尿感がある」「尿の切れが悪い」などがあげられています。