むくみが起きる原因
「むくみ」というのは、身体の組織の中に正常よりも余分に水分がたまった状態を言います。一番典型的な症状としては、足のすねの皮膚を指で圧迫すると「凹む」ことで、むくみの存在が確認されます。
むくみが起きる原因としては、大きく分けて3つあります。
第1は、心臓の力が弱くなった場合で、血液の循環が悪くなって静脈血が心臓に戻りにくくなり、身体の末端での静脈圧が高くなって、血液中の水分が組織にしみ出してしまうことによって起きる「心(臓)性のむくみ」です。
第2は、腎臓の力が弱くなった場合で、腎臓の尿を作る機能が低下して、身体から十分に水分が排泄されずに、組織に余分の水分がたまってしまうために起きる「腎性のむくみ」です。
第3は、血液中の蛋白質(アルブミン)の量が減少し、血液の中に水分を保持することができなくなり、血液から組織へ水分が移動してしまうために起きる「低蛋白症のむくみ」です。
「むくみ」の症状が出る病気としては、まず心性のむくみとして、心筋梗塞などの虚血性心疾患、心弁膜症、心筋炎などの心臓の病気と高血圧症に基づく心不全があげられます。心性のむくみは、血液の循環が悪いために起きるので、重力の関係で下肢に著明に発現するのが特徴です。足首、すねなどを指で押すと、ぽこっと凹むときには、心性のむくみが考えられます。
次に、肝臓の病気で、低蛋白性のむくみを起こす病気に、肝硬変症があります。肝硬変症では腹水を認めることがあります。
全身のむくみを認める病気に甲状腺機能低下症があります。甲状腺機能低下症のむくみは、指で押しても「凹まない」むくみであることが特徴です。
腎臓病は初期には症状が少ない
「肝腎かなめ」と言われるように、肝臓と並んで、腎臓は生命の維持に不可欠な大切な臓器です。腎臓は、背中側の腰の上の位置に左右1対、計2個あります。腎臓の主要な役割は、血液の中から水分と老廃物を濾しとって、尿として体外へ捨てることです。
一口に「腎臓病」といっても、数多くの病気があります。下記の表で腎臓病度をチェックしてみてください。
「Yes」が多いほど腎臓病度が高くなります。
腎臓病度チェック
- 顔にむくみがある
- だるくて、疲れやすい
- 尿の色が変わった
- 尿の出る量が変わった
- 尿の出る回数が変わった
- 血尿が出る
- 腰の上を叩くと、ひびいて痛い
- 原因不明の発熱が続く
- 最低血圧が高くなった
- 尿に蛋白が出る
むくみの原因となる腎臓機能が低下する病気としては、腎炎とネフローゼ症候群が代表格です。その他の腎臓の病気としては、感染症として腎盂炎、腎結核、腫瘍としては腎臓がん、痛みがある病気として腎結石などがあります。腎機能が低下した状態を総称して腎不全と呼び、重篤な腎不全では、腎臓透析治療が必要となります。
腎臓病は、初期には症状が少ないのですが、多くは尿に異常が出るので、尿検査によって早期発見が可能です。
腎炎
風邪や扁桃腺炎が治ってしばらくしてから、急に尿量が減って、とくに朝起きたときに、まぶたが腫れぼったく、顔がむくんでいたら、急性腎炎を考える必要があります。尿を調べると、蛋白が陽性で、血尿が認められます。急性腎炎によるむくみは、腎性のむくみの代表です。全身がむくみますが、とくに顔がむくんだら腎臓の病気を考える必要があります。
慢性腎炎のときにもむくみが認められますが、むしろ心性のむくみと低蛋白性のむくみの要素が関与していることが多いようです。
ネフローゼ症候群
種々の原因や場合によっては原因不明で全身に高度のむくみを認めるのがネフローゼ症候群という病気で、低蛋白性のむくみの代表的な病気です。尿を調べると蛋白が強陽性で、血液を調べると蛋白質、とくにアルブミンが著明に減少していることが特徴です。
子供では、はっきりと原因のわからない真性ネフローゼが多く、大人では慢性腎炎からの移行が多いようですが、きわめてまれな病気が原因になって起きる場合もあります。