気になる臓器、肝臓
本特集では、「気になる症状」ということで、「疲れ」という自覚症状を取り上げました。「肝臓が悪い?」というのは、自覚症状ではありません。にもかかわらず、気になる症状として、このタイトルを選んだ理由は3つあります。
第1の理由は、「肝臓は沈黙の臓器」と言われて、肝臓の病気は自覚症状があまり出ないことが特徴なのです。したがって、肝臓の病気について、「気になる症状」を取り上げることはなかなか難しいのです。
第2の理由は、肝臓の病気では自覚症状があまり出ないはずなのに、何か身体の調子が悪いと、「肝臓が悪いのでは?」と相談される人が非常に多い、という医師としての経験です。
第3の理由は、自覚症状はなくても、血液の検査をしてみると、肝臓の働き(肝機能)に異常を認める人が予想以上に多いという事実です。
肝臓の病気には、きわめて数多くの種類があります。代表的なものをあげると、ウイルス性肝炎、薬物性肝障害、アルコール性肝障害、代謝性肝障害、肝硬変症、肝臓がんなどです。ウイルス性肝炎には、おもに飲食物を介して経口的に感染するA型、E型、おもに血液を介して感染するB型、C型、D型などがあります。患者の数から見ると、急性A型肝炎、急性B型肝炎、慢性B型肝炎、慢性C型肝炎がおもなものです。
薬物性肝障害は、各種の薬物によって引き起こされる肝機能障害です。薬物の説明書を見ると、ほとんどすべての説明書に肝機能障害を起こすことがあると書いてあります。薬物を服用するときには、常に肝臓が悪くなる可能性があると考えておく必要があります。
薬物による肝機能障害だけではなく、いわゆるサプリメント、健康食品などによる肝機能障害が非常に多いことも忘れてはいけません。
アルコール性肝障害は、大量(日本酒に換算して毎日3合以上程度)のアルコールを長期間摂取することが原因ですが、その量、期間については個人差が多く一概には決められません。また、C型肝炎との合併が関与しているとの意見もあります。
代謝性肝障害として、もっとも多いのは脂肪肝です。脂肪肝というのは、フランス料理のフォアグラ(ガチョウに高栄養を与えて肝臓に脂肪を蓄積させたもの)と同じ状態で、人間フォアグラと言えます。最近若年層に増えていることが問題です。
肝硬変症は、独立した一つの病気というより種々の原因によって生じた肝障害が治癒しないで、慢性の経過をたどって進行した終末像です。肝臓細胞が破壊されて線維に置き換わり、肝臓が硬くなってしまった状態です。
肝臓がんはC型肝炎からが多い
わが国では、肝臓がんは、がんによる臓器別死亡原因で胃がん、肺がんに次いで第3位の位置を占めています。
肝臓がんには、「原発性肝臓がん」と「転移性肝臓がん」とがあります。原発性の約90%は、B型またはC型肝炎ウイルスの持続感染が原因です。とくにC型肝炎ウイルスと肝臓がんとの関係が問題視されています。
わが国のC型肝炎ウイルスの持続感染者(HCVキャリア=C型肝炎ウイルス保菌者)は150万人以上いると推定されています。HCVキャリアの多くは、自分がC型肝炎ウイルスに感染していることを自覚していません。HCVキャリアの約70%は慢性肝炎と診断されますが、それでも自覚症状はほとんどありません。40歳以上の人は、歳以上の人は、全員がC型肝炎の血液検査を受けてください。
この慢性C型肝炎から肝臓がんに移行する可能性があります。国は老人保健法などによって、国民全員がC型肝炎の血液検査を受けられるような政策を進めています。
沈黙の臓器と言われている肝臓の病気の特徴として、肝臓がんにも自覚症状として特徴的なものは少ないのですが、強いて言えば、下記の表のような症状が肝臓がんのチェックポイントになりますので、チェックしてみてください。
「Yes」が多いほど肝臓がん度が高くなります。
肝臓がん度チェック
- 全身がだるい
- 腹部が痛い
- 腹部に膨満感がある
- 食欲がない
- 上腹部にしこりがある
- 原因不明の発熱がある
- 黄疸がある
- 肝臓が腫れていると言われた
- 体重減少がある
- なんとなく体調がすぐれない